中小企業の親子間事業承継をスマートに「コアとDNA」で行う方法  |京都・アイデンティティブランディング

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中小企業の親子間事業承継をスマートに「コアとDNA」で行う方法

中小企業経営研究会様の情報誌「近代中小企業」に掲載いただきました、中小企業における親子間の事業承継問題を解決する方法をご紹介します。

以下にその全文を掲載させていただきます。

先代と後継者の共通点を「コア」と「DNA」で探り“共通言語”を開発する

株式会社アイデンティティブランディング
CIコンサルタント
大江祐介

先代から後継者に本当に受け継ぐべきものは「コア(根源的価値観)」と「DNA(自社にできることの本質)」の2つです。これらの共通言語を開発し、先代と後継者の間で共有することでスムーズな事業承継が可能になります。なぜ、コアとDNAの共有が必要なのか、また、どのように共通言語を開発するかを伝授します。

先代と後継者が共有できる共通言語

●どちらにするべきか

後継者に、

  • 自分(先代)のやり方を承継すべきなのか
  • 本人の自由にやらせるべきなのか

明確な判断基準を持たずに承継を行うと、経営の迷走を引き起こすことになります。その判断基準として有効なのが、先代経営者と後継者のマインド(脳と心)の整理による「共通言語の開発」です。

では、なぜ共通言語が必要なのでしょうか?

経営資源が少ない中小企業は、特に経営者のマインドから生み出される思考と行動エネルギーが経営の方向性を大きく左右します。その際、先代と後継者のマインドが食い違っているとすれば、従業員は的確な指示を仰げなくなることは明白です。そのマインドは曖昧な捉え方ではなく、言語によって適切に定義しておく必要があります。

●2つの視点

つまり、成功する事業承継を行うためには、先代と後継者が共有できる「モノサシとしての共通言語」が必要であることが分かります。このとき、先代と後継者のコミュニケーションの「量」よりも、共通言語を開発する「視点」と「順序」の方が重要なポイントになります。

本稿のタイトルにもありますが、共通言語を「コア」と「DNA」の2つの視点から開発することで、先代から後継者が本当に受け継ぐべきものを明確にする方法を以下に紹介します。まずは、導入として2つのキーワードを定義します。

「コア」根源的価値観

「コア」とは、個々人のマインド中に定着する根源的価値観で、過去・現在・未来において変わることなく、エネルギーが湧き上がるポイントのことです。

例えば、弊社のコアには「自分らしさ(アイデンティティ)」という共通言語があります。これは筆者の中で、中学生の頃から20年以上も変わっていない重要ポイントであり、人の「自分らしさ」に触れる事柄に出会ったとき、行動せずにはいられないエネルギーとなり湧き上がってきます。事業承継などの人に関わる支援業務を使命としているのはそのためです。

つまりコアとは、人間に高いモチベーションを与える源泉なのです。仕事や経営においても同様で、コアを見ずに細かな作業内容だけで人間の行動を規定することは困難です。

「DNA」自社にできることの本質

企業における「DNA」とは、自社にできることの本質になります。では、事例で解説してみましょう。

長野県伊那市の寒天メーカー「伊那食品工業株式会社」。同社は、食品としてだけではなく、寒天の本質である「液状を固体状にする性質」を活かしてゲル化剤を開発している他、様々な商品やサービスで事業展開を進めています。つまり、寒天の本質はすべてに共通していますが、同社は、その本質を自社にできることに細分化して具現化しているのです。

事業承継の際、後継者が本人のやりたいことを優先するあまり、自社の本質を外した事業計画に乗り出すことがあります。しかし、脈々と受け継がれたDNAがある以上、できることは限られています。

後継者なりのやり方を通すケースでも、受け継がれて来た自社にできることの本質を外して事業を成功させることは困難です。

自社にできることを曖昧に捉えず、細かに細分化して本質にまで分解してみることが大切であり、その細分化した結果が企業のDNAなのです。

コアとDNAの共通言語化で成功へ

なぜ事業承継にはコアとDNAの共通言語化が必要なのでしょうか?それには人間の脳に関する科学的な理由があります。

人間の脳は、情報を取捨選択する「RAS(網様体賦活系)」の働きにより、自分自身が重要性を見出している情報しか知覚しないようにできています。

例えば、会社の中にゴミが落ちていた場合「会社内を清潔に保つこと」に重要性を感じている人はゴミに気づき、そうでない人はゴミに気づくことさえありません。視界に入っていたとしても、ゴミに気づくか気づかないかは、個人のマインドの状態によって左右されるのです。

この性質を応用し、企業のコアとDNAを共通言語化して後継者が受け継ぐことができれば、後継者はその視点に対して重要性を見いだすことになります。

重要性を感じる情報は脳がいち早くキャッチするため、先代の思いと後継者の思いの摺り合わせが加速的に進むことになります。

コアは会社の理念や行動指針に関わる経営の基礎部分に、その基礎から生まれるDNAは事業内容の根幹となるコンセプトとして、密接に関連してきます。そのためには、先代と後継者が持つコアの中で、「無意識のうちに共通している領域」を探ることが成功への近道です。

承継のためのセルフ質問法「5ステップ」

以下の取り組みで、先代と後継者のマインドの整理を行い、共通言語を見つけるためのセルフ質問法「5ステップ①〜⑤」を紹介しますが、実施あたり留意すべき点は、自問自答は先入観が入ることが多いため、可能であれば第三者に協力してもらい、質問を受ける形で進めることをお薦めします。

親子間事業承継の実例として、京都府北部およびアメリカにて自動車販売・整備業を行うK社を取り上げます。

先代の「地域の方々に密着し自動車関連サービスを幅広く展開して行くべき」との考えに対し、後継者は「得意分野に特化したブランド戦略を取り入れたい」と考えていました。

これをどのような形で解決したのか、その方法を紹介します。

ステップ①(個人)個人のコアを探る

マインドの重要性を変えるには「現状の視野」を圧倒的に広げる必要があります。自分の未来を意識することで、マインドの重要性は自動的に変化します。

この取り組みは、先代と後継者がそれぞれ個別に実施して、次の質問の答えをノートなどに書き出しながら進めていきます。

  • 質問1「5年後の理想の自分をイメージしてください。その中で、この部分を省くと自分は自分でなくなってしまうと感じる点は何ですか?」
    ※ポイント:質問に沿って答えを複数書き出します。できる限り具体的にイメージを言葉にします。
  • 質問2「なぜ、それが重要なのですか?」
    ※ポイント:質問1で出てきた答え一つひとつに対し、重要性を感じている理由を書き出してください。

この2つの質問により、未来ビジョンをイメージしながら、かつ「なぜ?」を加えることによって、過去培ってきた「コア=根源的価値観」に触れることになります。つまり、ここで出てきた答えは過去・現在・未来をつなぐ軸となるポイントなのです。

ステップ②(先代&後継者)コアの共通点を探る

先代と後継者で出し合った個々人のコアを互いに照らし合わせ、双方の答えの共通点を探ります。

では、K社での例を見てみましょう。先代と後継者にステップ①の2つの質問に答えていただきました。

後継者からは、

  • 自分自身が立ち上げたブランドが認められる
  • 良きアメリカのライフスタイルを提案している

などのイメージが創出されました。その理由は、自分が展開した会社を受け入れてくれたアメリカという土地が、自己責任に基づく自由という意味で自分の価値観に合っていたからです。

先代からは、

  • 末広がりの家庭をつくる
  • 残りの人生は、自由に好きなように生きたい

という回答を得られました。先代は「空を飛ぶ」ことが好きで、アメリカで飛行機とヘリの免許を取得して、ヘリクラブを創設した趣味人です。広大なアメリカの大空へ、自由に飛行機で羽ばたいたときの感動と興奮が今も忘れられないのです。

これらの結果から、不思議なことに二人の間には共通したニュアンスが存在していました。それは「アメリカ」と「自由」です。先代と後継者は、同じ空気、同じ環境で過ごすことによって無意識のうちに一定の価値観をすでに共有しているものです。

ところが多く人が、この事実に気づいておらず「自分とはまったく考え方が違う」と思い込んでいるケースが見受けられます。

まったく違うと感じている考え方を摺り合わせるのは多大な労力を必要としますが、すでに共通している根源的価値観であれば共有は容易です。これが企業の「コア(根源的価値観)」となるのです。

ステップ③(先代&後継者)感情を共有する

ステップ①〜②の結果を受けて、「どのような気持ちか」を共有します。

コアは、人間のエネルギーが湧き上がるポイントであると述べましたが、そのエネルギーには必ず喜怒哀楽いずれかの感情が伴います。人間は本来「理屈」で動く生き物ではなく、「感情」で動く生き物であることは、認知心理学の見地からも明白です。

このため、未来の理想に向かうイメージで感情を正しく出すことによって、非言語の世界での感覚が伝わることになります。これは事業承継において、非常に重要なステップです。

ステップ④(先代&後継者)会社のDNAを探る

ステップ③の感情のステップを経て、先代と後継者の関係性が融和していると感じましたか。そうであれば、この④のステップに進み、先代と経営者が同時に次の質問に取り組んでください。

  • 質問1「自社において過去うまくいったことは何ですか?なぜうまくいったと言えるのですか?」
  • 質問2「自社において、過去繰り返し、大切に取り組んできたことは何ですか? それはなぜ大切だったのですか?」

2つの質問に答え、項目をホワイトボードに複数書き出してみましょう。

過去うまくいったことの理由は、会社の「強み」になります。また、繰り返し大切に取り組んできたことの理由は、会社の「基本方針」と直結した部分になります。つまり、それは「DNA(自社にできる本質)」を導き出すための重要なキーワードとなります。

ステップ⑤(先代&後継者)DNAの共通点を探る

ステップ④で導き出した内容全体を見渡し、「このキーワードは何回か出てくる」という要点を探します。

まったく違う内容や出来事であったとしても、無意識のうちに共通しているニュアンスがあるはずです。

K社においては、それは「お客様一人ひとりに対して丁寧な接客を行う」「お客様が本当に欲しい車を提案することで満足度を高める」「他者とは違う車やカスタマイズを提供し独自性を出す」ということが、共通点として挙がりました。そして、その結果から導き出された共通点は「パーソナライズ」というキーワードになったのです。

先代と後継者でやり方や事業戦略は変わったとしても、一人ひとりの好みや価値観に合わせたサービスを提供するという本質的な点は共通していたのです。

今後、同社は「自由とアメリカ」という価値観をベースに、自動車のパーソナライズサービスを展開する企業としてブランドを構築していきます。このように、先代と後継者の本質的共通点により導きだされた「自社にできること」こそ、事業承継の根幹となるDNAなのです。

まとめ

コアとDNAという視点によって導きだされた「共通言語」をもとに事業承継の計画を組み立てることによって、先代と後継者の意思疎通は格段にスムーズになります。この方法論は、脳の仕組みを応用した方法であり、違和感のない、客観的事実に基づいた承継が可能となります。

細かな方法論や業務内容の受け継ぎの前に、その根源となる「コアとDNAを探る」ことが、成功する事業承継の重要なポイントなのです。

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