アイデンティティブランディング

現在進行系で変化する
マニュアルなきサービス精神。KISSUIEN Stay & Food様

KISSUIEN - Corporate Branding

三代目となる現社長への事業承継のタイミングでお出会いした、プラザホテル吉翠苑様。現在はより明確化したコンセプトに基づき社名変更され、ホテル名も「KISSUIEN Stay & Food」と改名されました。(写真撮影/KISSUIEN社長 田中槙太朗さん)

経営理念「ライブ」

事業承継の頃、社長ご自身が、今後この会社をどのように経営していくべきか、様々な想いを巡らせておられました。それに伴って始まったブランディングプロジェクト。社員様を含む8名でのプロジェクチームを編成し、経営理念の策定から取り組みました。

KISSUIEN様ではまず、個人個人のコア(根源的な価値観)、コアプロセス(決め手となる強み)、ビジョン等を言語化することからはじめました。後にさらに明確になるのですが、KISSUIEN様は「個性ある個人」が集まった会社。ルールよりも個性、目先の儲けよりもお客様の満足を大切にする会社です。個人の考えを重視する文化は、経営理念を作成する前から息づいていました。その個性の向こう側に、会社としての考えを確立しようと試みました。

個人をみつめ、会社を見つめる中で導き出された経営理念は「ライブ」の一言。添え書きとして、「スタッフとゲストの相互ライブに生きる」と策定しました。

マニュアル然とした関係ではなく、スタッフの個性も、お客様の個性も大切にする。その上で常に現在進行系〈ライブ〉で変化し、今だけの価値ある体験を提供する。それが、KISSUIENの根底にある価値観だったのです。これらの考え方は「クレドカード」としてまとめ、社員全員が携帯されています。

原点回帰&進化したシンボルマーク

その後社長の中に、自分たちのシンボルとなるロゴを正式に作りたいという想いが芽生えました。社長の奥様が折り紙デザイナーとして多方面で活躍されているクリエーターさんであるため、奥様がデザインされるという方向で、ロゴ制作の取り組みが始まりました。弊社はそのファシリテーションを行い、どういった考え方でロゴを作成するべきかをアドバイスさせていただきました。

そこでたどり着いたのは、昔から存在しているプラザホテル吉翠苑のロゴに添えられていた、小さなマーク。必ずロゴについているが、あまり存在感は放っていないマークでした。

そのマークを丁寧に観察してみると、何かを核として外側に広がっていくような、それでいて、たくさんのことを受け入れるような、内向きにも外向きにも見えるマークであることが分かってきたのです。弊社は、そもそもこのマークを、正式にKISSUIENのシンボルマークとして制定するのはどうかと提案しました。しかし当初、このマークをどのように捉えるべきか?が明確でなかったため、若干の迷いがありました。そこで、マークから連想されるイメージと、現状のKISSUIENの価値観をすり合わせ、意味付けを行ったのです。

その内容を受け、社長の奥様がこのマークをリアレンジ。より線をスリム化し、バランスを整えるデザインを行われました。そしてさらに、言われないと気づかない程度に、線を揺らす、という加工を施されました。この、わずかな線の揺れが、機械的でない人間らしさを表していて、KISSUIENにふさわしいロゴとして完成したのです。

「あうんの玄関」ブランドアイデンティティの策定

そして取り組んだのが、ブランドアイデンティティの策定です。KISSUIENの価値は、何なのか。

プロジェクトチームの皆様でKISSUIENの価値を考え続ける中で、まずたどり着いたキーワードは「玄関」でした。KISSUIENは昔から、地域を代表するホテルであり、もともと地域の人たちに望まれて生まれてきたホテルだといいます。このため、まさにKISSUIENは、遠方から来られる方にとって、当地域「京丹後」の玄関になるのです。またそれだけにとどまらず、旅の方も、地域の方も、KISSUIENの玄関をくぐれば、肩書を脱いで個人に戻り、リラックスした時間を過ごせるということ。

しかし「玄関」だけでは、KISSUIENの価値として認識することは難しいと言えます。考え抜く中で、ある社員さんから「KISSUIENの玄関には、狛猫が置いてある」という言葉が出てきました。狛猫は、京丹後峰山の金刀比羅神社に鎮座する、神に仕えるネコです。全国唯一の、狛犬ならぬ狛猫、と言われています。KISSUIENでは、この狛猫を大切にされており、シンボルキャラクターとも言える存在なのです。この狛猫は、狛犬と同様に2体が対となっており、「あ」と「うん」をあらわしています。物事の、はじまりとおわり。

この事実から連想し、社員様からふと「あうんの玄関」というフレーズが生まれました。聞いた瞬間に、それいい!となったのです。

素の自分に戻れる場所へ

なぜ「あうんの玄関」なのか。それは、狛猫を大切にしているから、という理由だけでなく、もっと本質的なことがあります。

社長の一家である田中家には、昔からよく人が集まると言います。いろんな人と、いつの間にか、仲良くなる家系。そしてそれは、プラザホテル吉翠苑というホテルでもそうでした。

実はそこには「あうんの空気」があるのでは、ということなのです。

普通、あうんの空気というのは、一緒に過ごす時間を積み重ねて生まれるものですが、田中家やKISSUIENにおいては、その時間が短く、仲良くなるのが早い。あうんの空気がある場所では、気を使うこともなく、居心地のいい場所となります。

その、あうんの空気にたどり着くための玄関が、KISSUIEN。

KISSUIEN様は、新しいコンセプトと哲学を胸に、2022年、客室を大幅リニューアル。それに伴い、ウェブサイトのリニューアルもひかえています。多くの人が「あうんの玄関」をくぐり、素の自分に戻るようなリラックスした時間を過ごせるよう、今後も活動は続いていきます。

Work Details

プロジェクトチーム結成/会議ファシリテーション
リーダーシップワーク/コミュニケーションワーク
プレゼンテーションワーク/自己啓発ワーク
経営理念策定/ビジョン策定/タグライン策定
ブランドアイデンティティ策定/ブランドストーリー策定
行動指針策定/クレド制作/顧客価値分析/3C分析
写真撮影/レストランメニュー制作/チラシ制作

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