アイデンティティブランディング

「認知症の方とも、想いは通い合う」
と信じて。福祉のうえもり様

Welfare Uemori - Corporate Branding

2014年、以前から友人でもあった植森社長から、「自分をプロデュースして欲しい」というご相談をいただきました。当初植森社長、個人の意識を掘り下げる活動から始まり、やがて「福祉のうえもり」として確立するまで、様々な取り組みを支援させていただきました。

社長個人のコアキーワード「助ける」

個人の意識を掘り下げ、「道」を見つける過程の1つに、自分史を書くという取り組みがあります。

うえもりの事業である認知症専門の介護業は、もともと現植森社長が立ち上げたものではありませんでした。先代である、現社長のご両親が立ち上げ、その後、現施設長である社長のお姉様が業務の中心となっていきました。現植森社長はさらにその後に社長に就任されています。

自分史を客観的に見つめる中で、現在の事業を行う根本的な動機は、一見介護業には無いように思えました。なぜなら、会社を継いだ動機は、「お姉様を助けるため」だったからです。

その後も様々な質問を通じ、植森社長の根底にある意識を掘り下げていきました。数ヶ月経ち、自分自身の心にひっかかっている概念を認識する中で、改めて「助ける」というキーワードが、自分自身の中核にあるということに気づかれました。

植森社長は、本業である介護業の他に、近隣のこども園の理事として活動されており、子どもたちが育つ環境を「助ける」役割もなさっていました。そして何より、そもそもこの仕事を継いだ理由が「姉を助ける」だったこと。そこで、社長があることを思い出されます。

「そういえば、自分の名前の由来、江助(こうすけ)は、"さわ江を助ける"だった」

さわ江とは、他でもない、お姉様のお名前です。

「助ける」。このキーワードにたどり着いた社長は、もともと自分が志したものではなかった介護業のことさえ、捉え直すこととなりました。介護業は、助ける仕事そのものだからです。

社員様を巻き込んだブランディングの始まり

一定期間、社長個人の意識掘り下げを進めた段階で、やはり事業所全体をどう改革していくか?に着目することとなりました。そこから、プロジェクトチームを編成し、ブランディングに取り組むこととなりました。様々な取り組みを経て、方向性として定まったのは、やはり経営理念とブランドアイデンティティ、そしてロゴが必要だということでした。

施設長である社長のお姉様は認知症、および介護・福祉のエキスパートであり、数々の講演活動も行っておられます。うえもりには、この施設長の思想が根底に流れており、現在のリーダースタッフは、施設長の考え方に共感されている方ばかりです。

その根本は、「認知症状態であってもなくても、誰でも自分の意思が尊重される社会に」というもの。

この哲学に基づき、社長とマネージャーを中心に経営理念が成文化されました。それは「人としてのありたい姿を支え続け、一人ひとりの生活を穏やかなものにする。」 です。「穏やかなものにする」 私はこのフレーズに、植森社長らしさを強く感じています。

「もう一度、笑顔の日常」 ブランドアイデンティティ策定

経営理念が決定したうえもりでは、さらに「うえもりの価値は何か」を掘り下げていきました。そこで、代表的なエピソードが浮上します。

それは、入所された利用者様のご家族からの「昔のお母さんに戻ったようで嬉しい」というお声でした。認知症になると多くの方は表情が消えてしまう傾向があります。しかし、うえもりに入所したあとは、なぜか、一度表情が消えてしまった方でも、また笑うようになる。

うえもりでは、何か特別なことが素晴らしいのではなく、ただ穏やかに笑顔で、元気であり続ける日常こそに価値があるという想いがありました。認知症状態になると、どうしても普通の人として接してもらうのが難しくなる。それでも、うえもりのスタッフは「認知症の方とも、想いは通い合う」と信じておられますし、実際にそう感じる瞬間は何度もあると言います。

そこから導き出されたブランドアイデンティティが、「もう一度、笑顔の日常」だったのです。

笑顔が戻る場所を示すシンボルマーク

ロゴ制作においては、ご一緒にブランディング活動を続けていただいた、マネージャーのアイディアが原案となりました。ハートをモチーフにしたマークをじっくり考案されていたマネージャー。弊社はそのマークについてファシリテーションを行い、ロゴとして成立するよう、アドバイスをさせていただきました。そして最終的に出来上がったシンボルマーク/ロゴがこちらです。

利用者様、ご家族様を支えるハート=気持ち、心、を主体として、「への字口だった表情が、にっこりになる」「表情が戻ってくる」ことをそれぞれ表現。人としてありたい姿で日常を送り続けられるように、という、うえもりの優しさがこもっています。

そしてこの時、うえもりの捉え方を介護業ではなく、福祉=人の幸福を支えること をベースに置くこととしました。その結果、屋号を「福祉のうえもり」と制定したのです。

うえもりは、家のようでありたい

うえもりのブランディングプロジェクトはその後、事業所のサインや封筒のデザインの刷新、ウェブサイトリニューアルへと進んでいきました。より進むほどに、うえもりは利用者様にとって介護施設ではなく、家のようでありたい、という想いが浮き彫りになっていきました。事業所内を撮影する時にも、スタッフの皆様の利用者様に対するフレンドリーさが伝わってきます。

介護ではなく、福祉として。「きもちのいい笑顔が見れると嬉しいから」という想いが息づいています。

Work Details

プロジェクトチーム結成/会議ファシリテーション
リーダーシップワーク/コミュニケーションワーク
自己啓発ワーク/採用シート制作
経営理念策定/ビジョン策定/タグライン策定
ブランドアイデンティティ策定/ブランドストーリー策定
顧客価値分析/3C分析
写真撮影/ウエブサイト制作/チラシ制作

福祉のうえもり

https://uemori201.com/

プロジェクト一覧へ