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時には”ゆっくり行く”のが一番速いのかも

先日納品させていただいた仕事、京都府京丹後市の「空き家バンク」サイトリニューアルで、京丹後市の魅力を伝えるページを一緒につくるというお題がありました。

魅力を伝える的なことは、よくあるケースなんですが、似たような情報がネットにあふれています。
もうちょっと新鮮な気持ちで、ちょっと、今までと違う角度で、京丹後というところを描けないものかと、いろいろ悩んだ末に、

「とりあえずカメラ持って歩く」

というシンプルな方法を、半信半疑でやりはじめました。

とりあえずカメラ持って歩く

京丹後市は、6町が合併してできた市で、かなり面積も広い。
それぞれの町を、歩きました。

もちろん大きな移動は車だけど。
かなり歩いた。何時間も。何日にも分けて。

歩くというのは、当然速度が遅くて、目的地から目的地までの移動という意味では、本当に効率が悪い。観光情報のサイトを作るなら、歩くなんてやってられない。(丹後では観光地を2箇所回るだけで何時間もかかる(^^ )

だから、最初はこんな効率悪い方法をとってていいのだろうか? と少なからず焦る気持ちがありました。

でも、今回は目的地という概念を外して考えたのもあって、だんだん気が楽になりました。

歩くとやっぱり、感じるものは多かった

そしたら、やっぱり感じるものは多かった。

9月の海。天然のプールのような場所で、子どもたちが泳いでいる。
若者二人はロッドを持って、防波堤をはしごしながら何らかの魚を狙っている。
平日だというのに何十人もサーファーが波を待っている。

旅館の中居さんと思われる女性二人が着物のまま歩いている。
町中では子供たち3人が電車遊びをしていて、その近くの小さな商店街は、古びているけど、流れるラジオからは最新の曲が聞こえてくる。

稲刈りをするトラクターが近づいても、逃げない鳥。
可愛いヒマワリがたくさん咲く場所。
「釣り専用」の看板が立つ清流。

波のない内湾にジェットスキーがラインを描いていく。
その近くには、海を見ながらグラウンドゴルフを楽しむシルバーさんの姿。

「車に乗って、取材に行く」では、気づかないことがたくさん。

もっと速く。時代はさらに加速…

たくさんの作家やアーティストが、この時代の「うつりゆく時間の速さ」を憂いています。

いつの時代からなのか?速いことは基本的によいこと。いかに他の人より、他の会社よりも速く結果を出すか。速さは価値になる。だから、時代のスピードは増すばかり。

特急から新幹線へ、そしてリニアへ。
3Gから4Gへ、さらに5Gへ。

消費が重要な世界では、これからもそれは続くでしょう。でもその分、何かを丁寧に見たり、丁寧につくったりじっくり感じるということができなくなってきました。

もっと速く、が大事だから、もっとじっくり、をやる時間もない。

時には、ゆっくり行くというのは、1番速いことかも

ところが、今回私たちは、一見効率が悪いと思われる方法でたくさんの情報と、たくさんの感覚をインプットすることができました。これは、新幹線で大阪から東京へ移動する時よりもはるかに多い情報量です。

2時間歩けば、とてつもない一次情報がリアルにインプットされる。
実は、ゆっくり行くというのは、ある意味一番速いこともあるのかもしれない。

情報量を多くインプットできるということは、脳内で動いている意識としては、ものすごい速さで回転しています。その意識の速度は、新幹線で雑誌読んだりパソコン打ったり、缶ビール飲んだりしてるよりも、はるかに”速い”。

ただ、1つ思うのは、「ゆっくり行く」と「遅い」は違うということです。遅いのがいいというよりは、ゆっくり行く、つまり「じっくり」はいい、ということなのかな。

もちろん、速いことが大切なこともたくさんある。でも、時代がそうであっても、「じっくり」を忘れていいことにはならない。

もう一度、じっくりを楽しめるように、なりたいなと思います。


今回の話題にあげたサイトの1コーナー。「フォトさんぽ」というタイトルは、藤原が考えてくれました。
https://kyotango-akiya.jp/fotosampo/

どの町もよかったけど、丹後町の海は心にせまるほどきれいだったなあ。

   (大江 祐介)

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