アイデンティティブランディング

ステレオタイプの沼から這い出すブランディング

こんにちは、大江です。いつもありがとうございます!

今日は、私にとっても学ぶことが多かった「有限会社グリーンファームソーゴ様」のウェブサイトリニューアルの事例をご紹介し、改めてブランディングについて考えてみたいと思います。

10年以上前に、ご縁あってウェブサイトを製作させていただいたグリーンファームソーゴ様(養鶏業)ですが、デザインイメージをグワシャーっと方向転換してのリニューアルになりました。

当時サイト担当として大変お世話になった阿部さんが、現在は同社の社長に。

阿部社長のオーダーは「ぶっとんだ企画をお願いします」でした…!

もちろん、ただ変わっていればいいというものではありません。阿部社長は、以前からずっとそうでしたが、物事の本質、深い部分を鋭く洞察する方です。たいていの人が盲点になるところを、見抜くような。

同社の商品は、「卵」です。まさにスーパーにならぶ、卵。同社の代表ブランドは、ヒット商品となった「卵どすえ」「黄味自慢」です。

サイトリニューアルにあたり、改めて「卵」というものを見つめ直すことになりました。

ですが、「卵」です。

卵。

これ以上、何があるのだろう??卵は卵ですよね…?

殻が白かピンクか、黄身の色はどうか。などの違いはあるとしても、それ以上の特徴はなかなか見つけにくい。つまりスタンダードすぎて差別化しにくい、ブランディングしにくい商材です。

どうやって「ぶっとんだ企画」にすればいいのだろう…?

卵は最優秀助演賞

何かヒントを得ないといけないので、いつものようにヒアリングをさせていただきました。その中で、阿部社長から、印象的なお話があったのです。

「卵は食の主役にはならないかもしれないけど、最優秀助演賞をとる存在。その時、何をもって主役を引き立てるかは、卵の〈色〉なんです」

確かに、同社の卵は、色に特徴があります。かなり赤みが強い「卵どすえ」と、黄色みが強い「黄味自慢」。でも、世の中には色が特徴の卵は存在します。

ところが、「最優秀助演賞」という捉え方をしたときに、卵の見え方が変わりました。

それまでは、「卵」や「養鶏場」というイメージで卵を見ていました。家庭的、日常、スーパーで主婦が買うやつ、養鶏場は牧歌的で、緑のある農場のイメージで、安心安全で、クリーンにやってますよ感、おいしい卵お届けします、という、ステレオタイプ。

人間は、ステレオタイプから抜け出すのは難しい。

でも「最優秀助演賞」、つまり料理を引き立てる存在としての卵という観点になったとたん、従来のステレオタイプから少し抜け出すことができたのです。

阿部社長の観点は、卵という存在から少し抽象度を上げ、「卵をとりまく環境」という観点に変わっていることが分かります。

料理から卵以外の料理を抜いたビジュアル

それから様々な企画を考え、複数のビジュアルを考案しました。最終的には弊社の藤原が出してきた、「皿の上に、生卵がのってる、だけ」のビジュアルをメインに提案させていただき、実際にそれが採用されることとなりました。

料理が盛られた皿から、卵以外の料理を抜いたビジュアル=卵だけが残ったビジュアルということです。(さらに生卵なので、卵を調理するという行為さえも抜いたことになりますが)

ブランディング的にはこれを「記号化」といって、強調したい部分や印象づけたい部分を抜き取ってビジュアル化する方法です。結果として、阿部社長が大切にされている「卵の色」を強調する形になりました。

答えはいつも、そのものの中にある。

ブランディングとか、デザインの仕事をしていると、毎日がステレオタイプとの戦いです。

時には「ベタ」であることが重要になることもありますが、ブランディングと考える場合、やはり何か、他とは違う印象づけが重要になります。そういうとき、どうすればいいのでしょうか?

いろいろ考え方はあるのですが、最終的に戻ってくる観点は、やっぱり同じ。今回の阿部社長のお話に重要なヒントがあります。つまり、結局は、

「商品の本質を徹底的に掘り下げる」

ということです。答えはいつも、そのものの中にある。

多くのブランドを見ていると、どこかで聞いたことのあるフレーズだったり、なんとなくカッコいいビジュアルを出していたり、イベント出店の告知だったり、商品のイメージだったりを発信していることが多いです。自分たちの商品・サービスを徹底的の掘り下げて、その本質を発信している事例は、それほど見かけないのです。

事業者にとって、自社の商品・サービスというのは、近すぎて見えない存在なのかもしれません。だから、ちょっと客観的に、見つめ直すことも大切だと思うんです。そうすれば、ステレオタイプの沼から這い出し、他とはちょっと一線を隠した存在になり得ます。

また1つ、気づきをいただいたお仕事でした。阿部社長をはじめ、お世話になった皆さん、本当にありがとうございます。

☆「卵どすえ」を食べると、他の卵がちょっと物足りなくなってしまう? 見た目にも、味にも深みがある、卵どすえ、おすすめです(^^

有限会社グリーンファームソーゴ Website
https://gfsogo.co.jp/

グリーンファームソーゴ様事例
https://uvd.jp/website/gfs

CATEGORY

あたらしい記事Latest Column

アートとデザインの境界線/独学でデザイナーを目指したい彼女

ある方から「娘にデザインのことを教えてやってもらえませんか」という お願いがあったので、今日、その...

一瞬で伝える「キャッチコピー」 個店ブランディングVol.8

大江です。いつもありがとうございます! 今回は「キャッチコピー」についてです。 多くの事業所...

お店の識別を促す「テーマカラー」 個店ブランディングVol.7

大江です。いつもありがとうございます! 今回は「テーマカラー」についてです。 お店の特徴を印...

「キャラクター」の高い記憶性 個店ブランディングVol.6

大江です。いつもありがとうございます! 今回は「キャラクター」についてです。 くまモン」...